2010年2月2日火曜日

アルコール性肝炎

日頃、吐血やイレウスなどの消化管疾患に関しては経験することが多いのですが、肝疾患は遭遇する機会が少ないです。
先日アルコール性の急性肝炎の症例を経験しました。

【ALCOHOLIC HEPATITIS】
アルコール性肝炎の診断は臨床的・組織学的な診断基準で定義される。重度の大酒家で臨床所見や検査所見が合致した場合にアルコール性肝炎を疑う。

ー臨床徴候ー
特徴的な臨床徴候は発熱、肝腫大、黄疸、食思不振。重度のアルコール性肝炎では肝血管雑音も特徴的で半数以上で聞こえるとの報告あり。肝性脳症や出血傾向を呈することもある。症状を呈することが多いが、無症候性の患者もいる。
38度以下の微熱が典型的だが、SBPや肺炎、尿路感染などの感染症の原因がないか否定しなければならない。
身体所見では肝腫大がみられ、脂肪肝と細胞障害による肝細胞腫大を反映している。肝臓の圧痛があることもあるが、広範囲の腹痛は稀でSBPなどに気をつけなければならない。
約30%に腹水を認めるが、もともとの門脈圧亢進症や肝腫大による門脈圧迫によるものと考えられる。

ー診断ー
血液検査では通常のアルコール性肝疾患の検査所見に加えてT-Bilの上昇とALP・γ-GTPの上昇が典型的。この変化はAST/ALTが正常化した後も数週間残ることがある。

臨床所見で診断がつくことが多く、生検は不要な事が多い。病理学的には以下が見られる。
・肝細胞壊死
・Mallory小体
・好中球浸潤
・細静脈周囲中心に炎症がある
この中でも好中球の存在が特徴的でウイルス性肝炎では見られない。
文部省総合研究A高田班が提唱する診断基準がある。

ー治療ー
支持療法
・アルコール離脱の治療…必要ならベンゾジアゼピン系(セルシンなどの投与)
・輸液、栄養、ビタミン(特にB1,B12,葉酸)、元素(リン、マグネシウム)
 LCの患者では過剰輸液は避ける
・ビタミンK…あまり効果はないがPT延長している患者では通常投与される。
・活動性の出血がなければFFPの投与は1st lineの治療にはならない
・感染の疑いがあれば培養をだす。感染との鑑別が困難なことも多いためしばしば必要。
・消化管出血予防…H2ブロッカーやスクラルファート

有効と証明されている唯一の特別な治療はステロイド。栄養補給も有効であると思われている。
そのほかのオプションは確立されておらず、臨床試験が進行中。
・ステロイド…重症アルコール性肝炎患者でステロイド投与の禁忌がなければ推奨。プレドニゾロン40mg/日を4週間行って、2週間でテーパリングして終了。プレドニゾンよりプレドニゾロンを推奨(プレドニゾンは肝で代謝されてプレドニゾロンになるため)
・栄養療法…経腸栄養を推奨。タンパク質は肝性脳症のリスクとなるが、タンパク投与は問題にならないことが多くルーチンでタンパク制限をするべきではない。タンパク投与に関連して脳症の悪化があった場合にはBCAA製剤が有用かもしれない。
・ステロイドが使用できない場合にはentoxyfyllineが推奨。

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